そんな文脈で恋愛を語らなくたって

なんでもない会話の中で、わたしはつまづいてしまう。 当たり前のように異性愛を前提として話が進むとき、男性ホモソーシャルどっぷりな表現に触れたとき、単一民族的な発想で排他的な言葉が出てくるとき。それらを目の前にしたとき、大体は咄嗟に反応できずに、あとからその場で何も言えなかった自分を責めるのだ。 知っている。そういう言葉、かつては自分だってたくさん口にしていたんだ。 男の人って鈍感だよね、不器用だよね、筆不精だよね、服に興味ないよね。男の子なのに料理とかするんだね、マメなんだね。男の子がリードしなきゃ、誘わなきゃ、告白しなきゃ。女の人は気が利くから、マルチタスクだから、勘が鋭いから、嘘がうまいから。女の子だけど機械詳しいから、力持ちだから。女の子は誘われたいから、駆け引きしなきゃ、好きは相手に言わせたい — 。 男性のホモソーシャル視点で世界をジャッジする価値観を、「男はそんなふうに言っちゃってさ」なんて馬鹿にしつつも、他方で、「男ってそういうもんだから女が受け止めてあげるしかないよね」と物分かりの良い女であろうとすることで、あいつは女だけどわかっているなんて言われちゃって、それで良い気になっちゃって。

はらだまほ

ヴァイオリン弾き。装備は弓とペン。いつでもシャツ着てます。藝高/東京藝術大学/英国王立音楽院修士を経て現在同博士5年。